英字新聞カルチュラル・ニュースの日本語要約


by culturalnews

日本文化は、なぜ、世界の関心を集めるのか (改定版)

日本文化を伝える英字新聞「カルチュラル・ニュース」は www.culturalnews.com へ

東 繁春 (カルチュラル・ニュース編集長兼発行責任者)

 二〇〇八年は、わたしが、タブロイド版の英字新聞「カルチュラル・ニュース」の発行を始めてから、ちょうど、十周年にあたる年になりました。一九八一年に、二十七歳の時、ロサンゼルスに来て以来、地元の日本語新聞社の記者、日本の新聞社特派員の助手や、日本の通信社の日本語ニュースの配信という仕事を経て、一九九八年七月から月刊八ページの英字新聞を始めました。

 最初の一年は試行錯誤の繰り返しでしたが、やがて「日本文化を伝える英字新聞」というテーマを見つけることができ、多くの方に助けられながら、今日まで、新聞発行を続けることができました。

 わたし自身は、一人で着物を着ることもできず、日本舞踊も踊れず、三味線も弾けず、お茶の作法も知らない、日本文化を知らない平均的日本人なのですが、二〇〇六年度版、二〇〇七年版の中学社会科歴史教科書(中学一年生用、東京書籍発行)で紹介されたことも手伝って、最近、日本から「アメリカ人は、日本文化の何にいちばん、興味があるのでしょうか?」「今アメリカでいちばん、はやっている日本文化は何ですか?」という質問をよく受けるようになりました。

 そのとき、わたしは最新のアニメ作品の名前を挙げたり、(ロサンゼルスでは最近は、アメリカ人の間で居酒屋がはやりなのだそうですが)「日本食は、居酒屋が人気です」と答えようかとも、思うのですが、現在進行中のアメリカ、そして世界のひとびとの日本文化への関心の広がりは、とても、そうした個別情報の羅列では、説明できないほど大きな社会現象になっているのではないか、と考えています。

 この問題を考えるとき、逆の立場を想定して、つまり、日本人がヨーロッパ文化に関心を持っている、という構図で考えてみると、理解しやすくなるのではないか、と思います。実際、日本人は、ヨーロッパ文化がとても、好きな国民です。そして、日本にいる日本人に、「今、日本で、いちばん、はやっているヨーロッパ文化は何ですか?」と質問したと想定すると、多くの日本人は、きっと答えに窮するのではないでしょうか。つまり、日本でのヨーロッパ文化は、単に、一時的な流行やファッションではなく、日本人の生活に深く浸透して、しまっているからです。

 アメリカ人や世界中のひとびとの日本文化への接し方は、じつは、日本人がヨーロッパ文化を取り入れたやり方に、近づいているのではないかというのが、わたしの見方です。前世は日本人だったに違いないと、卒直に語り、百エーカー以上ある自宅敷地内に日本庭園を造ったり、美術館を建て、日本美術の保存と普及をライフワークにしている、カリフォルニア州中部ハンフォードに住むビル・クラーク氏や、第二次大戦前の東京で日本画を学び、日本画を描くことが至福の喜びである九十歳を越える、ビバリーヒルに住む、画家のロバート・クラウダー氏
から話を聞くと、日本人がヨーロッパにいだく尊敬や憧れ以上につよい、彼らの日本に対する思い入れを感じることができます。

 ヨーロッパの国々が世界に台頭してくるのは、十五世紀以降のことです。それ以前は、イスラム圏が、世界で一番文化が進んだ地域でした。十五世紀後半のコロンブスによるアメリカ大陸への航路開拓も、陸路をイスラムに支配されているために、海路でインドに行かざるを得ない、というのが、本来の目的でした。

 平安時代の王朝文化や「源氏物語」が書かれたことに見られるように、日本の文化は、ヨーロッパ文化の開花よりも早くから発達し、十九世紀までは、その内容も、劣っていませんでした。
 
 日本人がヨーロッパに対して劣等感を抱くようになるのは、明治維新のせいです。明治政府は、自分たちの政権を正当化するために、徳川幕府に結びつくものを、すべて否定してしまいました。一九七〇年代の中国の文化革命のような、伝統文化を否定する社会状況が、日本でも、明治維新のときに起こっていたのでした。

 おもしろいことに、ヨーロッパで、日本文化への関心が高まるときは、いつも、日本人が日本文化に興味を失ったときなのです。明治政府による廃仏毀釈政策によって、国宝級の仏像が多く、海外に流出したことが、ヨーロッパ人が日本美術を「発見」するきっかけになりました。第二次世界大戦による日本の敗北、アメリカ軍の日本占領は、再び、日本の美術品が海外に流出する大きなきっけになりました。フランスの絵画に大きな影響を与えた浮世絵は、十九世紀に日本から輸出された陶器の包み紙として使われていたもので、日本人が浮世絵を売り込もうと思ったわけではありません。

 つまり、日本文化は、日本人が宣伝しなくても、ヨーロッパ人に直接触れる機会が与えられるならば、ヨーロッパ人のほうから自発的に関心を持つだけの価値を最初からもっているのです。「日本文化を伝える英字新聞」カルチュラル・ニュースは、ヨーロッパ文化をもつロサンゼルスのアメリカ人ばかりでなく、日本文化を失ったわたし自身のような日本人にも、日本文化に触れるきっかけを提供することを目的としています。 www.culturalnews.com
                                 
(了)
[PR]
by culturalnews | 2008-01-04 11:47