英字新聞カルチュラル・ニュースの日本語要約


by culturalnews

冷戦から脱皮する自衛隊

カルチュラル・ニュース 2005年2月 掲載記事の日本語原稿

執筆者=神浦元彰


昨年、12月末に起きたインド洋大津波被害では、15万人を超える死者が確実になった。すでに世界各地で、津波被災者への援助活動が活発に行われている。

日本政府は緊急援助隊を派遣するとともに、インドネシアのスマトラ島に自衛隊員800人の派遣を決めた。具体的には陸自部隊は5機の輸送ヘリ(CH-47 3機、UH-60 2機)と医療チーム(200人)、海自は大型輸送艦、補給艦と護衛艦の3隻(600人)、空自は輸送機の(C-130)を1機か2機(40名)を派遣する。米軍の空母1隻を含む1万3000人にはかなわないが、日本の自衛隊での海外派遣では、過去最大の派遣規模となった。

さらに今回は、陸海空という3自衛隊が、初めて一つの司令部で統合指揮されることになった。統合指揮というのは、米軍などでは珍しいことではないが、自衛隊では初めてのことなのである。

なぜかと言えば、日本は旧軍の時代から、陸軍と海軍の仲が悪かった。中国大陸に進出したい陸軍と、西太平洋を支配したい海軍の戦略が激しく対立した。

陸海空3自衛隊の初級幹部を、同じ学校で教育するという制度は、戦後の防衛大学で初めて可
能になった。(旧軍には空軍はなかった)

しかし各地の部隊では、陸海空の交流はほとんどなかった。1985年8月日航ジャンボ機が墜落した災害派遣では、陸自の偵察部隊と空自(救難ヘリ)の無線機が通じなく、墜落現場さえも特定できなかった。そのために何度も統合して統合指揮演習を行ったが、実際の現場では陸海空の垣根は大きかった。昨年の新潟・中越地震でも、陸海空が違えば、隣の派遣部隊が何をしているか知らないこともあった。

しかし今回のスマトラ沖では、陸自の部隊は海自の輸送艦をホテルシップ(宿泊艦)として使う。米軍がタイのウタパオ基地に設置した救難支援司令部には、陸海空から選ばれた統合司令部が統一した指揮を行い、C-130輸送機が海空部隊に救難物資を運ぶ。

これは自衛隊が、北朝鮮後の基本戦略に掲げている「離島防衛」作戦の訓練でもある。九州南端から台湾を結ぶ線に並ぶ多くの離島を、陸海空3自衛隊が共同で守る作戦テストの初ケースである。

空自の戦闘機や攻撃機が、海上や離島に上陸した部隊を爆撃する。陸自の部隊を搭載した海自の輸送艦が離島に運び、それを海自の戦闘艦船が支援する。そのような陸海空が一体化作戦のテストである。

これは言うまでもなく、近い将来、東シナ海から西太平洋に進出を企てる中国軍を牽制する戦略だ。しかし自衛隊と中国軍が戦争をするためかと問われれば、日本は離島防衛の能力を高めことで、中国に無用な軍事力行使を起こさせないためと答える。自衛隊が離島防衛することで、中国への抑止力を高めるためである。

これが米ソ冷戦という重い武装を脱ぎ、軽くて柔軟な新しい自衛隊の姿なのである。
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# by culturalnews | 2005-09-08 09:06 | 神浦元彰の世界の見方

専守防衛は死語

カルチュラル・ニュース 2004年11月 掲載記事の日本語原稿

執筆者=神浦元彰

自衛隊が日本に誕生した50年前も、私が自衛隊に入隊した30年前も、自衛隊に肯定的な政治家や憲法学者が語ってきたのが、「専守防衛」論であった。それで自衛隊が抱える政治的な問題を強引に解決した。

日本は決して海外に攻めない。自衛隊が戦うのは日本に外国の軍隊が攻めて来た場合のみ。だから自衛隊は日本国憲法で保有を禁止されている戦力にあたらない。自衛隊とはまさに自衛権の部隊なのだ。だから日本では「専守防衛」が国是だった。

ところが今、日本の周囲を見渡しても、日本に攻めてくるような意志や能力を持った国はない。あるとすればアメリカだが、アメリカとは日米安保条約を結んだ同盟国だから除外できる。先軍政治を掲げる独裁国家の北朝鮮は、すでに国家基盤は麻痺状態で、崩壊寸前の様相を強めている。とても日本を攻めるような力はない。中国やロシアも、日本を攻める能力はないし、日本とは対立を避ける友好政策をとっている。

こうなると専守防衛の自衛隊は存在意義を失いかけている。自衛隊ばかりではない。日本を守
ることを前提に結ばれた日米安保条約も、その存在意義を失いかけてきた。

といっても、日本には戦争を禁じた憲法があるかぎり、自衛隊が米軍と一緒にイラクで戦うことはできないし、大部分の日本国民はそれを支持しない。(自衛隊の人道的復興支援は別)
そこで小泉首相の私的諮問機関「安全保障と防衛力に関する懇談会」は、このことの重大性を指摘し、日米が自衛隊や日米安保条約の再定義を話し合い、新たな共同宣言をするように勧告する報告書を提出した。

この報告書を受けて、年内には日本の国防戦略の基本計画を示す「防衛大綱」が改定される予定である。

いよいよ日本では「専守防衛」に代わって、新たな国家戦略の時代が始まる。

しかし日本の政府には、その肝心な国家戦略がわからない。自衛隊は国連活動を重視するとすれば、国連を無視してイラクで戦争したアメリカを否定することになる。逆にアメリカ軍の後方支援(戦闘任務を含まない)が自衛隊の新任務とすれば、前線や後方の区別がないテロやゲリラ戦では説得力がない。

米ソ冷戦が終結した1990年、自衛隊は仮想敵国を失ってパニックになった。北朝鮮を新たな第一脅威にすることと、国際的な復興支援活動と、国内の大規模災害(阪神大地震)の救援でなんとか乗り切った。しかしイラクに自衛隊を派遣したことで、アメリカの戦争に追随することの危険も理解できた。

それでも年内には、日本の新しい国家戦略の基本(防衛大綱の改定)が発表になる。しかし政府は新たな国家戦略を見つけられない。自衛隊の悩みは深刻である。
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# by culturalnews | 2005-09-08 09:04 | 神浦元彰の世界の見方
カルチュラル・ニュース 2004年9月 掲載記事の日本語原稿

執筆者=神浦元彰

日本では防衛戦略の見直しが始まった。基本的には米ソ冷戦時代の大戦略時代から、小さな地域で起きるテロやゲリラ戦に対応する小規模戦略時代への転換である。

日本に大規模な軍事攻撃が行われないとして、戦闘機や戦車の数を削減し、護衛艦や駆逐艦、哨戒機の数も減らすという。

そのため今まで自衛隊の使用する武器のみを生産していた軍需産業が、日本の「武器輸出三原則」の見直しを政府に求めてきた。またや防衛庁も見直しに応じる姿勢を見せている。

元々、武器輸出三原則とは、①紛争国に武器を輸出しない。②共産国に武器を売らない。③国連が武器輸出を禁じた国に武器を売らないという輸出禁止三原則だった。それが段々と拡大していき、いつしか日本はすべての国に武器を輸出しない武器輸出禁止国になった。

しかし唯一の例外がアメリカである。レーガン大統領と中曽根首相時代に、日本はアメリカに対し兵器技術に限って提供できる新たな規定を作った。それ以外は今でも日本は兵器輸出を禁じている。

しかし日本の経済界は、これからも武器輸出を禁じれば、技術競争に不利になると主張する。また武器の国際市場に日本も参画して、大きな利益を得たいと考えている。

ちなみに日本製の兵器は国際市場で売れるのか。簡単に言うと、戦車や装甲車、戦闘機や潜水艦などは売れない。性能が良くても価格が高すぎるのである。日本製の90式戦車の価格は米国製M1A2戦車の3倍である。その上、性能は米国のM1A2戦車がはるかに優秀で信頼性も高い。

ところが日本製で、米国だけでなく、世界の武器市場でも負けないものがある。それは進歩した日本の民生技術を応用した兵器である。例えば、日本が誇る産業ロボットに高感度センサーと移動装置をセットする。

さらにこれに機関銃やミサイルを組み込めば最強のロボット兵士に変身する。この兵士ロボットは重要基地を24時間警備することも、熱砂の砂漠や高層圏の空など、人間には過酷すぎる環境で働くことができる。例え敵に破壊されても兵士の戦死にならない。

ここにハイテク日本が兵器産業に莫大な需要を見込む可能性が潜んでいる。

しかしここで考えるべきことがある。将来、日本が世界市場を相手に兵器産業を興し、莫大な利益を上げるとする。すると日本の産業界そのものが、世界で戦争や紛争が起きることを好む体質に変化する。それが困るのである。

日本は資源や市場を海外に依存している国である。世界各地の治安悪化と混乱は、日本の産業にとって大きなマイナスである。

そのことに多くの日本人は気がついている。今まで日本が発展できたのは、軍事産業に依存しないで、平和国家を目指してきた成果だと知っている。もし日本政府や産業界が、あえて兵器大国を目指すなら、日本人は選挙という方法で平和国家という意思を示す。日本人にはそんな力が残っている。
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# by culturalnews | 2005-09-08 09:00 | 神浦元彰の世界の見方
カルチュラル・ニュース 2004年7月 掲載記事の日本語原稿

執筆者=神浦元彰

いよいよ東アジアの軍事情勢が動き出した。今年の夏、在韓米軍は3600人の兵士をイラクに派遣する。しかしその後、イラク派遣部隊が韓国に戻ることはない。さらに在韓米軍は来年末までに12500人の兵力を削減すると韓国に通告した。在韓米軍が2/3規模に削減される。

在日米軍にも新しい動きがある。沖縄の第3海兵師団の砲兵隊が、北海道東部にある矢臼別演習場に移動したいと日本政府に打診してきている。その兵力は700人程度と小規模だが、沖縄の海兵隊が他の地方に分散を始める前触れになる。

さらに極東を担当するワシントン州の第一軍団が、司令部を米国からキャンプ座間(神奈川県)に移したいと言ってきた。まずは軍団司令部を座間で立ち上げる。イラク戦争で米軍はフロリダの中央軍司令部を中東のカタールに移したのと同じだ。

その座間に隣接する横田基地には在日米軍司令部がある。そこに府中市(東京都)にある航空自衛隊の航空総隊司令部を移すようにと米軍が打診してきた。これで米軍と航空自衛隊の指揮が一体化してコントロールされることになる。

明らかに世界的な米軍の再編成(トランスフォーメーション)の一環であるが、その目的はどこにあるのか。危険な独裁者が君臨する北朝鮮を睨んでの再編なのか。否。もう米軍に北朝鮮の軍事力など視野にない。北朝鮮の軍事力は麻痺している。すでに北朝鮮軍は南進(韓国侵入)ができる力は皆無なのである。

今回の米軍再編は、ハイテク兵器の進化と将来の中国や極東ロシアを睨んだ大移動なのだ。北朝鮮が崩壊後に統一される朝鮮国家は、必ずアメリカと軍事同盟を結ぶ。中国も朝鮮半島に米軍が常駐しないことを条件に、アメリカと軍事同盟を結ぶことを許すはずだ。駐留なき米韓軍事同盟である。そうしなければ日本の軍事大国化を招くし、中国東北部の開発に必要な投資や人材を、日本や米国から呼び込むことにならないからだ。

アメリカも中国のICBM(戦略核ミサイル)がワシントンを狙っているので、中国との不要な軍事緊張は避けなければいけない。

しかし朝鮮半島には米国から提供された最新式のハイテク兵器が配備される。そして中露の国境を守るのである。その朝鮮半島の背後に、海に浮かぶ日本がある。日本に東アジアの軍司令部を置いた米軍は、大陸から進出する軍事力を抑止する。日本列島がアメリカの防波堤に塗り替えられる。

これこそアメリカが21世紀に向けた東アジア戦略なのである。まさに日米は軍事一体化を強めていく。しかし軍事では常識でも、アメリカのように片手で握手しながら、片手に棍棒(軍事力)を持つ国と、戦争を禁じた日本が外交を共有するには危険がある。日本の独自性が問われることになった。
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# by culturalnews | 2005-09-08 08:56 | 神浦元彰の世界の見方
カルチュラル・ニュース 2004年5月 掲載記事の日本語原稿

執筆者=神浦元彰

反米武装勢力と駐留米軍の間で、激戦が続いているファルージャ近郊で、日本人3人が誘拐される人質事件が発生した。さらに1週間後に、日本人のフリージャーナリスト2人がバグダッド郊外で誘拐された。最初の誘拐事件では、犯人たちは捕えた3人の日本人を写したビデオを、アラビア語放送のアルジャジーラ衛星テレビ局に持ち込んだ。3人の人質の背後に、銃やロケット弾を構え、黒いゲリラ服を着た兵士たちが威嚇していた。

その映像を見た日本人は、今までにない体験に大騒動となった。初めて、一般の日本人が中東の戦場で誘拐され、解放の条件として自衛隊のイラク撤退を要求したからだ。すぐに翌日の国内のメディアでは、自衛隊のイラク撤退の是が非か熱い議論が始まった。

しかしゲリラたちには別の誘拐目的があった。ファルージャを包囲して封鎖した米軍に対し、総攻撃を行わないように、外国人人質で「人間の楯」を作る目的である。航空機や戦車で攻撃する米軍に、ゲリラが勝てる可能性はまったくない。そこで米政府に圧力となる国の民間人を誘拐して、もしファルージャを総攻撃すれば人質を殺すと脅迫した。

この事件でわかったことは、日本政府にはイラクでNGO関係者などの民間人が、反占領を主張するゲリラに誘拐されるという予測をしていなかった。イラクの日本大使館員や自衛隊員が誘拐されることは想定していた。しかしイラク復興に貢献しているNGOなどの民間人が、イラクの反米武装勢力に捕らわれるとは思っていなかった。

これは明らかに日本政府の大誤算だった。ちょうどアメリカが独裁者フセイン政権を倒せば、イラクの国民から米軍は解放者として歓迎されると誤算したのと同じである。日本政府がたった5人の人質で震撼したように、アメリカも味方のはずのシーア派の一部が反米の旗を揚げたことに震撼した。

このようにイラクはアメリカや日本の大誤算で状況がどんどんと悪くなっていく。

幸い、日本人5人の人質は解放されたが、まだ多くの外国人が誘拐され、強い脅迫のもとに監禁されている。

非武装の外国民間人を誘拐することは許せない暴力だが、強い敵と戦うゲリラ戦では通常の戦術である。もはやアメリカはイラクで軍事支配できない。そのように思ったときに、ブッシュ大統領とブレア首相は、イラクの復興を国連に委ねることに方向転換したというニュースが流れた。

アメリカの軍事力が無敵ではないことを世界に宣言した。これでイラク情勢が少しでも安定し、多くの命が暴力で奪われることがないことを祈っている。
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# by culturalnews | 2005-09-08 08:53 | 神浦元彰の世界の見方

カルチュラル・ニュース 2004年3月 掲載記事の日本語原稿

執筆者=神浦元彰

自衛隊をイラクに派遣した小泉首相は、テロにひるまずテロと闘えと主張する。アルカイダなど国際テロ組織と闘うブッシュ大統領も、国際社会に向かいテロリストとの対決を訴える。ロシアのプーチン大統領もチェチェン共和国をロシアから分離させることを主張する武装組織と戦っている。

先日、そのチェチェン武装勢力のメンバーが起こしたモスクワ地下鉄爆破テロが発生した。モスクワの地下鉄で、通勤客で込み合う朝の通勤時間帯に、乗客として乗っていた自爆テロ犯が体につけた爆薬を爆破させた。このテロで00人の乗客が死亡した。

チェチェンでは多くの男たちがロシア軍との戦闘で死亡し、その婦人や恋人達が絶望した毎日を送っている。そのためチェチェンで自爆テロの実行者を募ると、多くの女性が志願してくるという。もはやこの世ですべての希望や幸せを失い、死後の天国で幸福を夢見る女性たちである。
日本人は自爆テロという言葉に、かつての特攻隊(神風)のような心情を連想する。

しかし調べてみると、イスラム社会では自爆テロには別な心情があった。それは聖戦宣言下で行われる自爆テロは、自爆犯が天国行きを約束される以外に、40人ほどの知人を指名できる権利を発生するという。親孝行したい両親、ともに苦難な時をすごした兄弟、世話になった友人や知人、そのような者を優先的に天国に招待できる権利である。

だから自爆テロを行うものは、ある種の希望をもっているのである。イスラエルなどで多くの人が自爆テロ犯の爆破直前の顔を目撃している。自爆テロ犯の中には、ニコニコ笑っているものが多いという。まさに天国への旅立ちを夢想している。

軍事を研究している者の1人として、私がたどり着いた結論は、自爆テロに対抗できる軍事的な方法が一切ないということである。02年、同時多発テロが起きるまで、テロリストが旅客機を襲い、パイロットを刺し殺し、自ら操縦して世界貿易センタービルに突入すると誰が予測しただろうか。また、時速275キロで地上を走る新幹線「のぞみ」の先頭車両で、自爆テロ犯が爆薬を爆破させないと誰が断言できるのか。

政治家たちは国民に自爆テロと闘えと訴える。しかし圧倒的な軍事力でも、自爆テロと闘うことは容易ではない。そのことはイラクの情勢悪化でも証明されている。

最近、私は自爆テロをなくすことばかり考えている。そしてたどり着いた結論は、自爆テロをなくすことは、その温床となるような社会の貧困や差別や搾取をなくすことではないかいうことだ。

人々がこの世で希望を失わず、明日に向かって生きていく力を与えることこそが、自爆テロを防ぐ最も効果的な方法だと思う。そのことに最も責任があるのが政治家である。しかし政治家がその責任を放棄して、テロと闘う為に軍事力を使うことを主張する。事態はどんどんと悪化していく。

私には軍事力を使えばテロがなくなるという政治家の言葉がわからない。そして自爆テロには軍事力で絶対に解決できないと断言する。
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# by culturalnews | 2005-09-08 08:50 | 神浦元彰の世界の見方
カルチュラル・ニュース 2004年1月 掲載記事の日本語原稿

執筆者=神浦元彰

日本政府は自衛隊のイラク派遣の基本計画を決定し、そして具体的な内容(概要)を派遣部隊に示した。それに従って、空自は1月下旬にはC-130輸送機3機をクウェートに派遣して、本格的な空輸活動の体制を築く。

イラク南部のサマワに派遣される陸自は、4月末までに総勢550名の部隊を送る準備を進めている。その内訳はユーフラテス川の浄水を行うのが30名、医療活動に従事するも者が40名、宿営地の整備を行う者が50名、それに本部要員や通信や炊事などを行う者が300名である。

この他に今回、自衛隊は初めて戦闘可能な警備部隊として、130名からなる歩兵中隊を同行させることにした。地域の治安維持を任務としていないが、自軍のための警護とはいえ、自衛隊が戦闘要員を外国に派遣するのは初めてである。この警備中隊には、従来の自動小銃や拳銃以外に、初めて84ミリ無反動砲や110ミリ対戦車ロケット弾を初めて装備した。これはアルカイダなどの自爆テロを防ぐためである。もし宿営地に向かって自爆テロの車両が突進してくれば、この無反動砲やロケット弾が発射される。

また海外派遣では初めて、装輪装甲車や軽装甲車も配備した。イラクで多発している自動小銃や迫撃砲の襲撃に対抗するためだ。

日本政府が決めたサマワでの復興支援活動とは、①浄水して給水する、②医療活動を行う、③病院や学校などを修理する、の3点である。

しかしサマワに派遣した自衛隊が、いくら無反動砲や装甲車を配備しても、宿営地以外での復興支援活動は無理だろう。なぜならイラクのゲリラやテロリストが持っているRPG-7対戦車ロケット砲の待ち伏せに襲われるからだ。また宿営地以外では活動中の自衛隊員が狙撃されたり、自爆テロの攻撃を受ける可能性が高い。

戦争に慣れていない日本では、少数の自衛隊員死亡でも大きな政治問題になる。1発のRPG-7で装甲車の隊員が10名も死亡すれば小泉政権に崩壊の危機が襲う。

そのためサマワの自衛隊は、宿営地内の活動だけに留めることが考えられる。宿営地で浄水は行うが、給水は取りにきたものだけに与える。病人は宿営地内の診療所にきたものだけに治療を行う。巡回医療は行わない。学校や病院の修理は、治安が劇的に改善された場合に行う。

しかし現地の治安が劇的に改善する見込みはない。このように外出もできない厳しい環境なので、サマワの派遣部隊は3ヵ月で交代する。

米兵がサマワの自衛隊を見れば、なんと弱虫と笑うかもしれない。しかし日本では、無理をしなくていい、自衛隊員は絶対に死ぬなという意見が圧倒に多い。日本人は戦争の虚しさを知っているからだ。アメリカでは戦争は正義かもしれないが、日本で戦争は罪悪なのである。
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# by culturalnews | 2005-09-08 08:46 | 神浦元彰の世界の見方
カルチュラル・ニュース 2003年10月号掲載 記事の日本語原稿

執筆者=神浦元彰

ブッシュ大統領がイラク戦争を始めた時、小泉首相はいち早く支持を表明した。そうすることでアメリカ政府が喜ぶと思ったからだ。イラクで大規模な戦闘が終わると、日本政府はイラクの復興支援に、自衛隊を派遣するイラク特措法を国会で成立させた。

しかしイラク特措法には、自衛隊を送る場所は、戦闘が行われていない安全な地域に限定すると明記してある。なぜなら戦闘地に自衛隊を派遣することは日本の憲法で禁じられてからだ。
日本国憲法では国際紛争を解決する手段として戦争を行うことを禁じている。自衛隊はあくまで日本が侵略された場合のみ、日本本土や周辺の海域や空域で戦うのみである。

だが02年、政府は自衛隊を国連PKO活動に参加することが決めた。これは紛争地で戦闘を行う任務ではないからだ。自衛隊は国連PKO活動で道路の修理や、病院や学校などの建設を行う。

しかし今度のイラク派遣は、まさに憲法で禁じられた戦場に行くことになりそうだ。イラクの治安を回復させようとする米軍に、ゲリラ攻撃で死傷者が続出している。

派遣をためらう日本政府に向かい、アミテージ国務副長官は、「逃げるな日本、アメリカ軍が困ったときに助けるのが真の日米軍事同盟だ」と叱った。そこで日本政府はイラクで自衛隊が活動できる安全な場所を探して何度も調査団を派遣した。

なぜそれほど自衛隊は安全な場所にこだわるのか。日本の自衛隊も軍隊なら、命令で危険な場所に行くのは当然ではないかと思う人がいるだろう。しかし自衛隊は普通の国の軍隊と違うのである。自衛隊は平和憲法の精神から、武器の使用を厳しく制限されている。もし他国からの侵略でなければ、自衛隊の武器の使用は、警察官と同じ使用基準を守るように定められている。正当防衛と危険回避だけである。

相手が銃を持っていても、自分に危険が及ぶまで使用できない。ガサガサと森の中で人影が動き、「出て来い、出て来い」と叫んでも出てこなければ、自衛隊員は撃つことはできない。通常の軍隊なら、ROEに従って射撃することが可能である。もし銃を撃って、誤って子供を射殺してもROEで許される。しかし自衛隊員は殺人罪で罰せられる。

イラクは戦闘状態にないとイラク特措法で定義しているからだ。そのように定義しないと、イラク特措法は憲法違反で作れなかった。その結果、自衛隊員はイラクに行くのに武器を封印していく。自衛隊員の中には片手を縛られて戦場に行くようだと話す者もいる。そのような大きな矛盾に自衛隊員は苦しんでいる。

しかし日本の政治家は軍事知識の不足から、そのような矛盾に無関心である。アメリカが来いと言うから、早く自衛隊はイラクに行ったほうがいいと言う。アメリカから莫大な戦費負担を言われる前に、自衛隊をイラクに派遣したほうが安くつくと言う者もいる。

これはアメリカがイラクの戦況予測を読み誤ったのが原因である。ブッシュ政権はフセイン大統領を倒せば、アメリカ軍は解放軍としてイラク国民から熱狂的に歓迎されると予測した。しかし結果は反発の強い占領軍であった。

日本にはブッシュ大統領のイラク戦争が間違った以上、新たに自衛隊の増派に応じる必要はないという意見が多い。もしイラクで自衛隊員が次々と死ねば、日米軍事同盟は危機的な状況を迎えるだろう。当然ながら、自衛隊をイラクに送った小泉政権は崩壊する。

しかし日本では、イラクの安全が確立されれば、イラク復興のために自衛隊を派遣することを多くの国民は支持している。

泥沼だったベトナム戦争の知る世代として、アメリカは出来るだけ早く、イラク復興の主導権を国連に譲って、多くの米兵をイラクから撤退させることを提案する。
このままではイラクの泥沼に再び苦しむことになる。
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# by culturalnews | 2005-09-08 08:36 | 神浦元彰の世界の見方