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英字新聞カルチュラル・ニュースの日本語要約


by culturalnews

自衛隊員は死んではいけない

カルチュラル・ニュース 2004年1月 掲載記事の日本語原稿

執筆者=神浦元彰

日本政府は自衛隊のイラク派遣の基本計画を決定し、そして具体的な内容(概要)を派遣部隊に示した。それに従って、空自は1月下旬にはC-130輸送機3機をクウェートに派遣して、本格的な空輸活動の体制を築く。

イラク南部のサマワに派遣される陸自は、4月末までに総勢550名の部隊を送る準備を進めている。その内訳はユーフラテス川の浄水を行うのが30名、医療活動に従事するも者が40名、宿営地の整備を行う者が50名、それに本部要員や通信や炊事などを行う者が300名である。

この他に今回、自衛隊は初めて戦闘可能な警備部隊として、130名からなる歩兵中隊を同行させることにした。地域の治安維持を任務としていないが、自軍のための警護とはいえ、自衛隊が戦闘要員を外国に派遣するのは初めてである。この警備中隊には、従来の自動小銃や拳銃以外に、初めて84ミリ無反動砲や110ミリ対戦車ロケット弾を初めて装備した。これはアルカイダなどの自爆テロを防ぐためである。もし宿営地に向かって自爆テロの車両が突進してくれば、この無反動砲やロケット弾が発射される。

また海外派遣では初めて、装輪装甲車や軽装甲車も配備した。イラクで多発している自動小銃や迫撃砲の襲撃に対抗するためだ。

日本政府が決めたサマワでの復興支援活動とは、①浄水して給水する、②医療活動を行う、③病院や学校などを修理する、の3点である。

しかしサマワに派遣した自衛隊が、いくら無反動砲や装甲車を配備しても、宿営地以外での復興支援活動は無理だろう。なぜならイラクのゲリラやテロリストが持っているRPG-7対戦車ロケット砲の待ち伏せに襲われるからだ。また宿営地以外では活動中の自衛隊員が狙撃されたり、自爆テロの攻撃を受ける可能性が高い。

戦争に慣れていない日本では、少数の自衛隊員死亡でも大きな政治問題になる。1発のRPG-7で装甲車の隊員が10名も死亡すれば小泉政権に崩壊の危機が襲う。

そのためサマワの自衛隊は、宿営地内の活動だけに留めることが考えられる。宿営地で浄水は行うが、給水は取りにきたものだけに与える。病人は宿営地内の診療所にきたものだけに治療を行う。巡回医療は行わない。学校や病院の修理は、治安が劇的に改善された場合に行う。

しかし現地の治安が劇的に改善する見込みはない。このように外出もできない厳しい環境なので、サマワの派遣部隊は3ヵ月で交代する。

米兵がサマワの自衛隊を見れば、なんと弱虫と笑うかもしれない。しかし日本では、無理をしなくていい、自衛隊員は絶対に死ぬなという意見が圧倒に多い。日本人は戦争の虚しさを知っているからだ。アメリカでは戦争は正義かもしれないが、日本で戦争は罪悪なのである。
by culturalnews | 2005-09-08 08:46 | 神浦元彰の世界の見方