英字新聞カルチュラル・ニュースの日本語要約


by culturalnews

日本文化はなぜ、世界の関心を集めるのか

2008年は、カルチュラル・ニュース創刊から10年になります。よくぞ、ここまで続いたと感慨深いものがあります。最初は、ロサンゼルスの日本人のための英字新聞を作ろうと始めたわけですが、2年目から日本文化紹介を柱とする編集方針が確立し、「日本文化を伝える英字新聞」となりました。

よく日本から質問を受けることに、「アメリカ人は、日本文化の何にいちばん、興味があるのでしょうか?」「今、日本文化の何が、いちばん、はやっているのですか?」というのがあります。

そのとき、「アニメです」とか「日本食の居酒屋です」と、わたしは、応えることができません。
日本人は、ヨーロッパ文化がとても、好きな国民です。日本人に、「今、日本で、いちばん、はやっているヨーロッパ文化は何ですか?」と聞いたときに、日本人は、なんと答えればいいでしょうか。

日本でのヨーロッパ文化は、流行やファッションではなく、日本人の生活に深く浸透しています。絵画が好きなひとは、ルーブル美術館こそ、いちばんの関心だと言うでしょうし、音楽の好きなひとは、ウィーンがいちばん行きたい都市と答えるでしょう。

アメリカ人の日本文化の接し方も、日本人のヨーロッパ文化への接し方に、近づいているのではないか、というのが、わたしの見方です。

ちょっと、極端するぎる見方かも、しれませんが、アメリカの日本文化は、中間層より上の暮らしをする人々の間で、急速に広まっています。社会のマジョリティーの中間層から下の階層のひとびとの間では、まだまだ、知られていません。しかし、時代の流れは、日本文化がアメリカで広がる方向に向かっているように思います。

なぜ、こうなるのでしょうか?その理由は、日本の歴史にあります。昨年と今年の夏は、四国大学の世羅博昭先生がロサンゼルスに来られて、「源氏物語」の世界、つまり、今から1000年前の平安時代について、教えていただきました。日本の歴史の重要性は、実は、平安時代以後の、鎌倉時代、室町時代、戦国時代、江戸時代にあるのです。

つまり、国家組織の中で、血族関係が最重要であった平安時代から、武力を持つものが国家を動かすことができるという、当時としては、たいへん合理的な価値観の転換が起こった結果に生まれたのが鎌倉時代で、そのご、その合理精神はますます発達し、織田信長・豊臣秀吉の時代には、日本は東アジアで最強の軍事国家になりました。江戸時代になって、ヨーロッパの国との外交を遮断する「鎖国」を行うことができたのも、国家として、ヨーロッパの侵入を許さない軍事力があったからのことでした。

このとき朝鮮半島や中国大陸はどんな状態だったか、というと、14世紀から20世紀まで続く李氏朝鮮や、明や清は、日本の平安時代のような社会システムが続いていたのです。その結果が、19世紀末に、東アジアにヨーロッパの国々が勢力を伸ばしてきたときに、中国や朝鮮は、対抗できる軍事力を持てなかったのです。

ヨーロッパの国々が台頭してくるのは、15世紀以降です。それ以前は、イスラム圏が、世界で一番文化が進んだ地域でした。15世紀後半のコロンブスによるアメリカ大陸への航路開拓も、陸路をイスラムに支配されているために、海路でインドに行かざるを得ない、というのが、本来の目的でした。

日本の文化は、ヨーロッパの文化の開花よりも早くから発達し、19世紀までは、その内容も、劣っていませんでした。日本人がヨーロッパに対して劣等感を抱くようになるのは、明治維新のせいです。明治政府は、自分たちの政権を正当化するために、徳川幕府に結びつくものを、すべて否定してしまいました。1970年代の中国の文化革命のような伝統文化を否定する社会状況が、日本でも、明治維新のときに起こっていたのでした。

ヨーロッパで、日本文化への関心が高まるときは、いつも、日本人の思いとはまったく関係なく起こっています。フランスの絵画に大きな影響を与えた浮世絵は、19世紀に日本から輸出された陶器の包み紙として使われていたもので、日本人が浮世絵を売り込もうと思ったわけではありません。

また、明治政府による廃仏毀釈政策によって、国宝級の仏像が恐るべき安値で、海外に流出したことが、ヨーロッパ人が日本美術を「発見」するきっかけになりました。そして、第二次世界大戦による日本の敗北、アメリカ軍の日本占領は、日本の美術品が海外に流出する大きなきっけを作りました。

つまり、日本文化は、日本人が宣伝しなくても、ヨーロッパ人が直接触れる機会さえあれば、、ヨーロッパ人のほうから関心を持つだけの価値を最初からもっているのです。

そのことが、いちばん、分からなくなっているのは、実は、現代の、われわれ、日本人ではないでしょうか。
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by culturalnews | 2007-12-25 17:47